the dead : beloved oneの制作に影響を与えた偉大なる作品たち
私はゾンビ映画、ゾンビゲームが大好きです。
ですから、いつかは自分の手でゾンビゲームを作ってみたいと思っていました。
世の中には無数のゾンビゲームがあります。
もちろんボードゲームの世界にも多数の名作ゾンビゲームがあります。
ですから私が自分でゾンビのアナログゲームを作ろうと思った時に考えたのは『自分の理想とするゾンビ世界を再現する』ことでした。
かつてジョージ・A・ロメロ氏はいわゆる『ゾンビ』を発明し、ゾンビパンデミックの発生から時系列に沿った世界の変化を複数の作品で描いてきました。
私もそんなことがしてみたい、素直にそう思ったのです。
今回のthe dead : beloved oneはゾンビパンデミック発生直後の世界を舞台に、名もなき人物が生き延びようと歩き続けるだけの物語となっています。
もしもあなたの愛する家族がゾンビパンデミックで失われてしまったら?愛する人がゾンビになってしまったら?
そんな命題に私が出した答えは『ただ生きること』でした。
死んでしまった家族のぶんも生き延びる。一日でも長く。
きっと私だったらそうするだろうと思ったのです。
このゲームには二人の登場人物が出てきます。
1人はプレーヤー(つまりあなた)である男性。
そしてもう1人はその男性の最愛の妻(beloved one)です。
2人には男の子がいましたが、つい先日5歳の誕生日に発生したゾンビパンデミックでその子を失ってしまいました。
そして昨夜、ついにあなたの妻も屍人たちの手にかかってしまったのです。
あなたは変わり果てた姿となった最愛の妻をただ見守ることしかできませんでした。
彼女はただひたすらあなたの後を追いかけてきます。ゆっくりと確実に一歩ずつ。
あなたは前に進むことしかできなかったのです。
このようなストーリーが生まれたのには私が今まで見てきた(遊んできた)映画・ゲームからの影響が大きいと思います。
ここではそんな愛すべき作品を紹介することで、拙作がどのような方向性のゾンビゲームなのかを少しでも説明できればと思っています。
ゾンビ大陸アフリカン(原題:The Dead)
今回のゲームのタイトルにも大きな影響を与えたのがこのゾンビ大陸アフリカンです。(原題のほうですよ)
ゾンビ映画というと『歩くゾンビか走るゾンビか?』論争が起こりがちですが、この映画は歩くゾンビが出てきます。
アフリカの雄大な大地を背にゆらりとたたずむゾンビの姿にワクワクしたものです。
映画としてはロードムービーの体をしており、ゆっくりと迫るゾンビの何とも言えない恐怖感がうまく表現された作品だと思います。
ゾンビが走らなくても追われる恐怖は表現できる。なぜならゾンビは歩き続けられるが人間は披露するからだ。
そんなことを改めて教えてくれたのがこの映画でした。
その考えはthe dead : beloved oneのシステムに大きな影響を与えています。
また、この映画を『たいくつ』『テンポが悪い』と感じる方はthe dead : beloved oneを遊んでも楽しいとは思わないでしょう。
28週後
この映画は走るゾンビ(正確には感染者)を一躍有名にした28日後の続編です。
いわゆるゾンビ映画というと残酷なシーンがこれでもかと出てくるイメージがあるかもしれません。
もちろんこの映画もそれなりに残虐な描写はありますが、メインとなるのは『子を想う父の気持ち』です。
ゾンビ映画において必要なのは『ゾンビを描くことではなく、人間を描くことなのかもしれない』と思わされた作品です。
今回のthe dead : beloved oneでも人の想いというものは重要なテーマとなっています。
しかしながらこの映画のようにゾンビが走ったり、ゾンビとのアクションがあったりはしませんので、そのあたりを期待なさらないようにお願いします。
マギー
シュワちゃんがゾンビ映画?ということで一瞬話題になった作品。
あまり評判にはならなかったようですが、この作品も『子を想う親の気持ち』がテーマとなっています。
28週後はアクション寄りに仕上げていましたが、このマギーは完全にドラマの部分のみで構成されているといってもいいでしょう。
なにせほとんどゾンビは出てきません。
しかしこの映画は私の好きなゾンビ映画であることは間違いありません。
ゾンビパンデミックの怒ってしまった世界で生きていくということはどういうことなのか?をしっかり描いた作品だと思います。
この映画も人によってはかなり退屈だと思います。
そして退屈に感じた方にはthe dead : beloved oneの世界観はご理解いただけないでしょう。
サンズオブザデッド
この映画にはびっくりしました。
砂漠をひたすら歩く主人公とそれをひたすら追いかける一体のゾンビ。
性別が逆ではありますがthe dead : beloved oneと状況がほぼ同じなのです。
完全にパクったと言われかねませんが、私がこの映画の存在を知ったのはthe dead : beloved oneを完成させた後でした。
この映画、かなりのネタ映画扱いをされていますがゾンビ映画として実によくできています。
主人公のキャラ設定、ひたすら追いかけてくるゾンビの恐怖感とユーモラスな部分のバランス。
そして圧倒的な孤独感。
まいりました。私がやろうとしていたこととほぼ同じなのです。
しかも序盤からは想像もつかないほどの人間ドラマも描かれています。
はっきり言って名作です。
ゾンビU, State of Decay
最後にデジタルゲーム作品を二つまとめて紹介。
これら二つのゾンビゲームにはある共通点があり、そこが私の大好きなポイントなのですがおわかりになるでしょうか。
答えは簡単、『ゲーム内で死んだキャラは二度と復活しない』ことです。
いわゆるゾンビゲームにおいて不満だったのは『なぜゾンビに攻撃されても(噛まれても)ゲームキャラは死なないし、ゾンビにならないのか?』ということでした。
この二つのゲームでは、ゾンビに攻撃を受け死亡したキャラは永遠にロストします。
そして新しいキャラクターでまた物語を引き継ぐのです。
これでこそ緊張感あるゾンビゲーム体験ができる、と私は思ったものです。
the dead : beloved oneにおいては、ゾンビに追いつかれた瞬間あなたは死亡し(ゾンビ化し)ゲーム終了となります。
テストプレイをしていただいた方からは『追いつかれても体力削って何とか生き延びられたらいいのに』という意見も出ましたが、検討した結果やはり即死したほうが良いと判断しました。
そうでないと私の理想とする物語は描けないと思ったからです。
長々書いてきましたが、こういった作品たち(他にもまだまだあるのですがきりがないのでここまでにします)のおかげで、the dead : beloved oneは完成したといっても過言ではありません。
そして、故ジョージ・A・ロメロ氏の生み出した(ロメロ)ゾンビは今もまだ世界中で愛され続けています。
the dead : beloved oneもこれら偉大な作品たちの末席を飾る事が出来ればこんなにうれしいことはありません。
追記:
サークル名のLatent Mellon Gamesという名前。
直訳すると『潜在的なメロンゲームズ』と言う意味になりますが、これはロメロ氏にちなんだ名前になっています。
Latentはロメロ氏が昔経営していた映像制作会社ラテントイメージから、Mellonはロメロ氏の母校カーネギーメロン大学からその名をいただきました。
あらためてロメロ氏のご冥福をお祈りします。
ゾンビを生み出してくれてありがとうございました。